モモコをもっとよく見て!(笑)〜菊池桃子

青春のいじわる/雪に書いたLOVE LETTER
 菊池桃子(キクチモモコ)って名前を言おうとすると、無意識に口をすぼめてしまって、いつの間にこっちもちょっとブリッコ口調になっちゃう。「モモコです。エヘっ」なんて小首かしげちゃったりなんかして(笑)。名前からして“アイドル”を運命づけられていたような、ホントに素晴らしい名前だと思うのよね。これが本名だっていうのだから、オドロキよね。
 モモコさんのデビューは1984年4月。雑誌「Momoco」&CM&映画&レコードというメディア・ミックス型デビューの先駆者でありました。それにしても雑誌に名前を冠されてしまうくらいなのだから、すごい。やっぱりデビュー当時の可愛さ(愛くるしい小動物的のようでした)がハンパじゃなかったし、事務所も逸材として相当に力を入れていたことが分かる。
 事務所の期待は当たって、デビュー曲「青春のいじわる」はトップテンこそ逃したものの、最高位13位のスマッシュヒット。その後はセカンド「Summer eyes」が7位、サード「雪にかいたLove Letter」が3位と着実に成績を伸ばして、84年春の「卒業」では見事にナンバー・ワンに輝いたのだ。卒業/もう逢えないかもしれない
 最終的には87年春発売の10thシングル「アイドルを探せ」まで、足掛け4年、6枚連続のナンバーワンを獲得しているモモコさんなのだけど、その輝かしい業績に比してその音楽的評価は驚くほど低い気がするのは何故かしら。
 やっぱり歌手として肝心なキャリア終盤に“ラ・ムー”でミソをつけちゃった影響が大きいのかしらね?(笑)彼女自身、そのことは黙殺し続けているらしいし。
 それはそれとして、今になってモモコさんの曲を聴き返してみると、その儚げな歌唱に独特の味わいがあって、なかなかなのよね。決して上手くないし声量もないから、どちらかというとウタというより、セリフの延長のような印象ではあるのだけどね。でも、彼女が“キクチモモコです”って囁くときのような、あのおちょぼ口から発せられる、少し舌が長い人に特徴的な発音(“sh”が“th”になる)が終始耳元に聞こえていると、ミョーに“オトコ心”がくすぐられるのは確か(笑)なのよね。彼女がウブな男子に圧倒的に人気があったのも、そんなところに理由があるかも。いずれにしても、そんな唯一無二のモモコ・(必殺)ウィスパー・ボーカルはハマルとクセになることうけあい。
 それと、外せないのは、サウンド・プロデューサーのような形で彼女のキャリアを通じて関わった林哲司氏の存在ね。どこかのコラムにも書いてあったのだけど、モモコさんのボーカルを外せば「オメガトライブ」と区別がつかないそのサウンドは、アイドルの枠を外れて和製AORしてます。はっきり言って完成度は、高い。特に後期の「Broken sunsetBroken Sunset/夏色片想いや「ガラスの草原」なんかが顕著で、いったい彼女にアイドルファン的に着いていたオトコのコたちはどんなカンジでこれらの曲を聴いていたのかしらね?ちょっとフシギ。
 ただ、林さんの曲はどちらかというと素直なメロディーが多くて“どっかで聴いたことある”という“デジャヴュ”感が漂うのも確かで。hiroc-fontanaは8thシングル「夏色片思い」が好きなのだけど、この曲にしてもAメロが「まちぶせ」っぽかったり、サビの「♪アン・ドゥ・トロワ」ってのもちょっとね・・てカンジ。でも、曲としては凄くまとまりがいいのよね、う〜ん。
 それとね。「卒業」発売時に同名異曲の乱立で話題になったけど、「Boyのテーマ」(→セイコ「ボーイの季節」)とか、「Say Yes!」(→チャゲアス)とか、「夏色片思い」(→「夏色のナンシー」)とか、「アイドルを探せ」(→シルヴィ・バルタン)とか、曲名にしてもどこかで聞いた事あるような紛らわしいものが多くて、それが、彼女が業績のわりに評価が低い一因なのかしら、なんて思うのだけど。大ヒットといってもあんまり、曲名が思い浮かばないのよね、モモコさんの場合(涙)。
 まあ、とはいっても、五月みどりの家に嫁入りして2児の母になった今も、42歳(!)にして純なイメージを失わずに芸能活動されているのだから、大したもの。天性の何かがあるのね、きっと。