AKBになれなかったコたち〜アイドル・ミラクル・バイブル・シリーズから

 お久し振りです。
 今回はこれです。

アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 沢田富美子・佐東由梨・沢田玉恵

アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 沢田富美子・佐東由梨・沢田玉恵

 沢田富美子佐東由梨沢田玉恵。共通点は、1)80年代のアイドル全盛期にCBSソニーからデビューしたこと 2)名前が"Sa"から始まること そして 3)ブレイクすることなく消えていったこと。。。(苦笑)
 そんな3人のシングルを寄せ集めて(苦笑)コンプリート収録したのがこのCD。hiroc-fontanaとしては、近年ラッパーのECDや加藤ミ●ヤが取り上げて話題になった佐東由梨ちゃんの伝説の名曲「ロンリー・ガール」が聴きたい一心で買ったわけなのだけど、いざ聴いてみたら由梨ちゃんの他の曲はもちろん沢田フミコたんもタマエたんも結構な"聴きモノ"で、かなり楽しめる1枚でした。
 まずは沢田富美子さん。1981年デビュー。本当はRCAから1979年に沢田"冨"美子名義でデビューしていて、そのデビュー曲「ノルマーリナ・ミーシャ<好きだわミーシャ>」も本CDに収録されているのだけど、タイトルからわかる通り、こちらはアニメ主題歌であったと同時に1980年開催のモスクワ・オリンピックとタイアップしていたそうで、結局かのオリンピックには日本は不参加で幻に終わったあたり、どことなくピンク・レディーの悲しい大コケソング「DO YOUR BEST」を連想してしまったりする。そう、ルックスも歌唱力も本格的な逸材であるにも関わらず、今思えばデビューから何となく"アンラッキー"な影をまとっていたのがこの人・沢田富美子さんなのね。
 結局そのあとに正式デビューした1981年の公式デビュー曲「ちょっと春風三浦徳子小田裕一郎大村雅朗という初期聖子を支えた鉄壁トリオが脇を固めながら、なんとチャート100位にもランクインせず。1981年と言えば、アイドル黄金期と言われる80年代前半にあって、聖子・奈保子・芳恵が登場した1980年と明菜やキョンキョンらを輩出した花の82年組の狭間で、この年デビューした女性アイドルはほとんどが苦戦を強いられた、因縁の年。そして沢田さん、あの「芸能人水泳大会」で"ポロリ"があった、などという都市伝説(?)だけを残して、シングル3枚のみでリタイア。曲を聴くと実に伸びやかな声で本格的な歌唱力を備えているし、ルックスも美少女そのもの、アイドルとして完璧であるだけに、何故売れなかったのかしら?と本当に不思議だったりする。まあ、翌年の82年組のデビュー当初の「未完成さ」を思うに、彼女の"完璧さ"が却って仇になってしまったのかしら?なんてコジツケるぐらいしか思い当たらないのよね。
 ところで彼女、現在は投資家として大活躍!とのこと。自身のHPの余裕に満ちた熟女っぷりに拍手です。まずはめでたしめでたし。
 お次は佐東由梨さん。こちらはかのミス・セブンティーン・コンテストを経て1982年11月にデビュー。デビュー曲「どうして?!」は松本・筒美の黄金コンビのペンにによる、1983年の河合奈保子の最大ヒット曲「エスカレーション」のプロト・タイプとも言うべきロック歌謡。ルックスは見ての通りボーイッシュで、歌い方もちょっと投げやりで無愛想な感じが持ち味。このCDに収録されている彼女のシングルAB面はどの曲もすべてハードエッジな同系統のサウンドで悪くないのだけども、その中ではやはりマービン・ゲイ「Sexual Healing」の見事な翻案曲(一口に言えばパクリ 苦笑)「ロンリー・ガール」が耳を惹く。それと、シングル曲を出すごとにめきめき表現力が増していくのが手に取るようにわかるので、この人、続けていれば大化けのチャンスもあったかも、なんて思ったりする(残念ながら1984年に引退、とのこと)。
 最後は沢田玉恵さん、1986年デビュー。なんとプロデューサーはあの酒井政利さんということで事務所もかなりプッシュしていたらしく、デビュー曲「花の精〜わたしのON-AIRへの松本・筒美の黄金コンビ起用はもちろん、レコードジャケットには「TAMAE」ブランドロゴが。おまけにデビューから2作連続で化粧品CMソングになっていて、デビュー当時の聖子さん並みです。しかし、結果は出ず。。。ヴィジュアル的にはとにかく素晴らしくて、透明感あるルックスに加え裏ジャケの全身写真のキマリ具合も特筆モノ。実はあの「北の国から」の出演も内定していたようで(その代わりに出演したのが横山めぐみだそう)、そのまま続けていれば彼女、もしかしたら女優として大ブレイクしてたかもね。一方の歌の方は張りのある安定したアルト声が盤石でこちらも素晴らしいのだけど、「花の精」のようなビートの効いた曲調ではちょっと本田美奈子ちゃんとカブってしまったキライはあったのかもね。おニャン子旋風吹き荒れていた時代背景もあって、結局はシングル2枚でリタイアしてしまった玉恵さん、引退理由は「家族が芸能界入りに強く反対していた」からだそう。惜しいわね。
 そんなわけで、ブレイクはしなかったものの逸材には違いなかった3者。時代が時代なら、AKBの一員としてセット売りしながらじわじわとその個性を一般に浸透させて活躍することが出来たのかもしれないナ、なんてことを思ったりして。タイトルはそんな意味合いでございました。

  • 沢田富美子「ちょっと春風」。このエキセントリックな高音にビビッ!

  • 佐東由梨「ロンリー・ガール」。こうして観ると、ルックス的にはメンテ前?のセイコさん系で中途半端かしら。もっとツッパッちゃえばよかったのかもね(笑)。

  • 沢田玉恵「花の精〜わたしのON-AIR」。声だけ聴くとやっぱり美奈子さん・・。