A級アイドル文句なし!なのに・・・

 いままで70年代アイドル&80年代アイドルでいわゆる“A級アイドル”と呼べる人はほぼ制覇してきたのが自慢のこのブログなんだけど、その中で唯一と言っていいくらい、ほとんど話題にしてこなかった大物アイドルが一人だけいたのです。
 それがこの人。河合奈保子ちゃん

河合奈保子・しんぐるこれくしょん

河合奈保子・しんぐるこれくしょん

 えーとね、初めに断っておくけど、hiroc-fontana、ナオナオは決してキライじゃないのよね。曲はほぼ洩れなく一定レベルをクリアした粒揃いの楽曲ばかりだと思うし、それ以上に奈保子さんの歌唱は非の打ちどころのない上手さだしね。愛くるしいルックスも、いつも一生懸命で素朴なキャラクターも、まさに“A級”。文句無し!だと思うのね。
 だけどね、何て言えばいいのだろう、奈保子さんがどんなイジワルな質問にも笑顔を絶やさずに受け答えをしたり、(おそらく不本意ながら)水着にさせられても嫌な顔せず懸命に歌を歌ったりする姿を見るたび、そしてそれが打算ではなく彼女の本質的な“素直さ”“純粋さ”から来ているのだ、ということが伝わってくるたびに、俺は奈保子さんに興味を失ってしまう・・・そんな感じがあったのだ。つまりね、同時期のセイコにいつも付き纏っていた“ブリッコ”とか“ウソ泣き”といった計算づくなイメージの対極にいつもいたのがナオナオだったわけで、マイナスイメージを抱えてなお輝きを増すセイコ、その強烈な魅力の虜になった(笑)ワタクシ・hiroc-fontataとしてはどうしても奈保子さんにはいつも“物足りなさ”が感じられたし、逆に“奈保子ちゃん、そんなにいいコなわけないよね?ホントは違うんでしょ?ね、正直に白状して”みたいな(笑)イライラさえ覚えたりして・・・ひねくれオキャマのジェラシーかしらね(笑)。
 ただ、そんな個人的印象は抜きにして、客観的にプロデュース面から見た場合も、奈保子さんにはいまひとつ、決定打となるべき戦略が欠けていたのは確かなように思うのだ。
 ボインな健康美(榊原郁恵路線)で攻めるのか、はたまた明るく伸びやかな歌唱力(岩崎宏美路線)で攻めるのか。それはつまり奈保子さんのレコード会社である日本コロムビアと所属事務所である芸映との綱引きだったのかもしれないけれど、メルヘンチックなデビュー曲「大きな森の小さなお家」(曲:馬飼野康二)での明るく伸びやかで確かな歌唱力、それはポスト岩崎宏美とも言える逸材だったはず。(今、聴き直すとそのフレッシュな魅力が良くわかる。)本来、セカンドシングルあたりから新進作家の手に委ねて宏美でいう「ロマンス」のようなトンガッた曲で勝負して、セイコとの「歌姫」勝負をしても良かったはずなのだ。それが、ボインな健康美イメージばかりが先行して、結果、デビュー当初は曲の方も郁恵路線で良くも悪くも70年代を引きずった王道アイドル歌謡の連続リリースが続き、肝心な時期に決定打がないまま時間ばかりが過ぎていった感じ。振り返れば河合奈保子の全作品で最高売上げを記録したのはデビュー4年目の「エスカレーション」(筒美京平作品)の34万枚で、その他は軒並み10〜25万枚の中ヒットに終わるという、まさに野球界ではイチロー的な“安打製造機”としか呼べないようなキャリアを重ねていくことになってしまうのだ。
 デビュー3年目以降に彼女が組んだアーティストは、「けんかをやめて」の竹内まりやをはじめ、来生姉弟尾崎亜美、先に挙げた筒美京平、「コントロール」の八神純子、アルバムでは石川優子谷山浩子など、多彩な顔ぶれなのだけど、「セイコ&ユーミン」「芳恵&みゆき」のようにビタッとはまる相手は最後まで現れず、結局、奈保子さんは本来から志向していた「自作自演路線」へと向かうわけで。
 う〜ん、俺としてはね、「エスカレーション」以降の筒美路線での「北駅のソリチュード」のコーラスとの掛け合いとか、「ジェラス・トレイン」の熱唱とか、結構好きなんだけど、それでもやっぱり音楽好きなナオナオが色んな音楽に挑戦してるから応援してね、みたいに見えてきちゃってね。もうひとつ入り込めないの。やっぱり奈保子さんに一番合っているように思えるのは、本来のキャラクターそのままの、軽やかで清純なポップスじゃないかな〜と。
 その意味で、地味だったけど「ストロー・タッチの恋」(1983年、詞:来生えつこ、曲:来生たかお、編:若草恵)とか後期では「ラヴェンダー・リップス」(1985年、詞:売野雅勇、曲:林哲司、編:萩田光雄)あたりが一番、“あ〜河合奈保子、らしくていいな”と思える作品なのよね。


 何となく結婚していつの間にか音楽活動もフェードアウトして専業主婦に収まっちゃった感じの奈保子さんだけど、今振り返ればやっぱり、彼女の本質は芸能界向きではなかったのかも、なんて、どうしても思えてしまうのです。
 活動再開を願う熱烈なファンの方も多いようだけど、その辺、つらいわよね。