セイコ・アルバム探訪14〜『Very Very』

Very Very(初回限定盤)
 さあ、お約束。でもね。。。
 この、とてもじゃないけど「長いキャリアを積んだプロ・アーティストの作品」とは言えない代物を前にして、果たして何を書けばいいのか、いま、途方に暮れている俺なのだ。
 このCDを聴いて、数千円出してこれを買ったことに心から後悔し、パチンコで何万もスったとき以上に打ちのめされている、そんな自分にも驚きで。
 すべて、悪い予感が的中。裸の女王様、聖子たんは、何でも言うことを聞くイエスマンで周囲を固め、自分のお城に籠城したまま、有り余るお金と暇にまかせて作った自己満足だけの粗悪な品物を大衆に売り付けて「どう?良いでしょう?嬉しいでしょう?」と、感謝と賞賛を強要しているみたいに見える。これは、確信犯だよね。こんなタイミングで「ど・セルフ」のアルバムを出してくるなんて。ファンをあまりにバカにしている。
 ・・・・出てくるのは恨み節ばかり。でも、それだけでは埒があかないので、ここはワタクシメ・hiroc-fontanaの得意な無理やりポジティヴシンキングで、この『Very Very』の楽しみ方を考えてみようと思う。
 これは『大物ナツメロ演歌歌手の新譜だ』、と思い込もう。
 そう、それでいい。すべてが“お約束”で出来ている世界。変わりばえのしないお決まりキイワードばかりの歌詞も、次の展開が容易く予想できるメロディも、閉ざされた“エンカ”の世界なら、当たりまえ。むしろ、変化がないことにこそ、意味があるのだ。たとえば誰が、「島倉千代子さんの新曲」に斬新な音楽性を求める?長年のファンは、今も変わらぬおチヨさんが、元気に懐かしい歌を歌ってくれればそれだけで満足であって、たまにおチヨさんらしい新曲を出してくれたら儲けモノ、恐らくそんな感じなのだ。新曲はちょっとした季節のご挨拶がわりのもので充分であって、今年もコンサートの第一部はお決まりの時代劇、そして第二部に懐かしのヒットメドレー。「またお隣の奥さんを誘って行こうかしら?」みたいな世界。
 聖子さん自身はもしかすると、すでにそんな活動にシフトしているつもりなのかも知れない。たくさんのヒット曲を携えて毎年コンサートを開き、たまに新曲を歌えば喜んでもらえる、大物ナツメロ歌手としての芸能活動。それだけでファンに喜んでもらえるのだから、“なぜいまさら、音楽的に難しい冒険をする必要があるの?私は私らしい歌を歌っていくのよ。”みたいなね。
 それに気付かずに、聖子たんに全盛期並みの活動と音楽性を求めようとしていた我々こそ、間違っていたのだ、きっと。そう、そう思い込もう!そう自分に言い聞かせて。。。。
 さあ、準備ができたところで、聴きましょう。『Very Very』。聖子たんとリョー小倉の名コンビによる待望の新作よ!!
 それでは、お約束の、曲紹介よ!

  • 涙のしずく

 ご存知、先行シングル。オリコン最高位20位。(翌週は60位!)ワルツです。「夏服のイヴ」よ再び、みたいな。久石譲のサントラみたいなイントロのアレンジは、好きよ。

  • Someday

 シンプルなバッキングでしっとりと歌い上げるバラード。聖子さんが突然のさよならを告げられた女性の切ない気持ちを切々と歌います。ええ、ただそれだけの曲ですけど。。何か?

  • Very Very!

 作曲は小倉君。懐かしの80年代シンセ・サウンド。ノリノリの曲で、ドンキの店内BGMに、ピッタリね。思わず何かを衝動買いしたくなる。タイアップ、いかがかしら。

  • ふたりのボン・ボヤージュ

 シングル「岩石口紅」のカップリングで隠れた名曲として名高い「ボン・ボヤージュ」の続編。ミディアム・テンポの曲調やサビがそのままあの名曲を彷彿とさせるな、と思ったら鉄橋とかトンネルとかペンションとかも歌詞に登場してきます。これがオリジナルというのだから、凄いのです。「輝いた青春の瞬間(とき)」って、セイコさんの書く歌詞って、やっぱり切ないね(トホホ、という意味でね)。

  • The Fantastic World

 お待ちかね、小倉リョーの才能、炸裂!な80年代のジャネット・ジャクソンを彷彿とさせるR&Bソング。さあ、あなたも一緒にダンシン!「すべてを忘れて・心に・身を任せてみましょう」ん?どこか歌詞におかしいところがあって?

  • Your Magic

 さあ、ダンステリアはさらに熱くなってきたわ、みんな踊って!セイコもウィスパー・ヴォイスで、セクシーに攻めるわよ!

  • You are everything〜あなたがすべて〜

 ふう〜。やっとまともな曲が(苦笑)。平凡なタイトルと裏腹にこれは佳曲。アルバム『Forever』の雰囲気に近い、ロッカ・バラード。間奏の哀愁ギターもなかなか。

  • Thank you for these memories

 こちらは「Somedeay」のアンサー・ソング(?)で、思い切って恋人にさよならを告げる女性の、切なくも、一方で吹っ切れた(!)複雑な気持ちを歌う聖子さんの歌声が、きっと心に沁みるはず。ファンのあなたならっ!! 邦題は「素敵な、想い出を、ありがとう、あなた」。ミディアム・ポップス。

  • 特別な恋人

 竹内まりやさん作詞・作曲・プロデュースによる記念シングル。「本当はセルフ・プロデュースのアルバムにしたかったのですけれど、感謝を込めて収録しました。(by Seiko)」みたいな。このアルバムを通して聴きながら、改めて素晴らしい曲だったということを再認識しましょうよ、皆さま。

  • あなたと生きること

 ラストの美しいバラードは、なんと、小倉良さんとのデュエットです。「二人で夢を叶え合いたいの。」という歌詞の通り、聖子さんと小倉さん、とうとう夢を「叶え合えた」のでしょうね。幸せそうな二人の歌声にうっとり、です。
 
って、もう、やってられませんわ!