小悪魔イヨちゃんの真骨頂〜「恋のKnow-How」松本伊代

恋のKNOW-HOW (MEG-CD)
 "女性アイドル"と言えば、やはり「妹」的な要素が欠かせないように思う。屈託なくて、可愛くて、ちょっぴりどこかがヌケていて、それでいて気まぐれで、無自覚なまま時にびっくりするほどイジワルで辛辣。
 それはまさに"小悪魔"的存在。まあ、これはあくまでもイメージ上のハナシであって、実際の妹だったら、ただ鬱陶しいだけの存在かもしれないけれどね(苦笑)。
 総じて女性アイドルの多くはそんな要素を少なくとも一つ二つは備えているように思うのよね。ただ、多くは小悪魔イメージの良い部分、屈託ない可愛さとヌケた部分(バラドル的要素)で勝負する場合がほとんどであって、ダークサイドを売りにする場合はどうしても「不良性」で勝負するしかなくなってしまうケースが多いような気もするけど。
 そんな中にあって、伊代ちゃんは珍しく"良い子"と"悪い子"がバランスよく共存しているアイドルのようが気がするのね。その意味では彼女こそ、アイドルの中のアイドルと言えるのかも、と。
 華奢な身体からは想像できない、ふてぶてしさ漂う(?)"魔女声"とか。
 そのイメージを増幅させるような奇抜な楽曲群とか。→「♪かけちゃうぞピーピピピ(「オトナじゃないの」)」「ねえ 君ってキラキラ?(「TVの国からキラキラ)」
 でもやはり、「オールナイトフジ」でのとんねるずとの絡みの中で見せた"素"の部分の印象が、伊代ちゃんイメージを決定づけているかもね。エッチなツッコミにあからさまにムッとしたり、有名な「ゴーストライターばらし」発言とかもそう(初めて自ら書いたという本の紹介の場面で、あっけらかんと「まだ読んでませんけど」(!)みたいなね 笑)。
 さて、そんな伊代ちゃんの小悪魔キャラが炸裂している曲が今回取り上げる10thシングル「恋のKnow-How」。1984年2月2日発売、作詞・作曲は尾崎亜美。ノリノリのシャッフル・ビートに乗せて伊代ちゃんの素っ頓狂な声が暴れまくる(笑)名曲。オープニングからいきなり「♪ルパンならば〜」と最高音から飛び出して、「♪Motion かけてほしい」とテンション高く畳みかけて「♪罪なのかし〜ら〜」のAメロの終りで印象的なブレイク。この曲の白眉はなんと言ってもそのあとのサビ。「Know-How 恋のレッスン One!Two!」この"One!Two!"の掛け声、声がビミョーにひっくり返るのが絶妙なのね。"恋のレッスン"と言うとどことなく淫靡なイメージが漂う気がする(俺がオッサンだから? 苦笑)ところを、この伊代ちゃんの魔女っ娘声がイタズラっぽく浄化しているような気がして、そのうえ"レッスン1、2、3"でなくあくまでも"One!Two!"で止めているところも「途中でやめちゃおっと。」という風に気まぐれな小悪魔をさりげなく演出しているようで、見事よね。
 まあそんな御託を並べなくとも、底抜けに明るい良質なポップ・ロックであることには間違いない。ちなみにこの曲、「レコード・コレクターズ」誌の「日本の女性アイドル・ソング・ベスト100」80年代版レコード・コレクターズ 2014年 11月号でも85位にランキングしてます。

 ちょっとぎこちないフリつけも、味がありますわ〜(笑)。