セイコ・アルバム探訪2016〜『Shining Star』

 最新作のレビューです。

Shining Star(初回限定盤A)(DVD付)

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「なんじゃあ!コラあ〜!」
 松田は松田でも、優作さんの、伝説のセリフ。月並みですけどね、これが、この盤を聴いたワタシの最初の感想。
 50枚目の記念アルバムだそう。これが・・・ね。・・・やれやれ。
 まあ、昨年のデビュー35周年は久々に松カルテットを復活させてくれた上、オールタイムベストのリリース&ヒットで、聖子さん的には「責任は果たしたわ。」という感じなのでしょうかね。その反動か、今回は自分の好きなように、ご趣味の「アーティストごっこ」している彼女がここに。
 まるで5年前の、奇跡の“まりやコラボ”後の状況、そのまま。あの時は、待望の外注曲「特別な恋人」が出て期待感たっぷりなタイミングに、聖子アルバムの中では“ラジー賞”間違いない(笑)『Very VeryVery Veryというステキなアルバムが登場したわけですけど、今回のアルバム『Shinig Star』も、もしかしたらラジー賞争いにノミニーかしら?なんて思いました。
 最初はね。
 でも、夏コンも近いし、とりあえず予習はしとかなきゃ、ということで仕方なく(苦笑)2度3度と聴くうちに、まあ最初に感じたほど悪くないわ、なんて思えて来たのよね。そんな風にもうすっかり、聖子たんの掌の上で転がされているワタシなのよね…。まあ、去年は頑張ってくれたし、今どきこんなベテランが毎年新しいCDを出してくれるだけマシかな?なんて。。。もう、そんな境地。
 そうして心落ち着けて(笑)聴いてみると、このアルバム、しっとり系の曲(「ずっと愛してるから」「Guardian Angel」など)ではときに聖子さんがハッとするようなニュアンスで表現する箇所があったり、力を抜いたビブラートがいつになく気持ちよかったりして、ボーカル・アルバムとしては悪くないかも、なんて思えてきてね。枯れた声は中音域がぼやけて相変わらず聴きづらいのは確かなのだけど、ヘッドホンで聴くと特に、聖子さんの歌への集中力の凄さが今更ながら、伝わってくるのよね。たとえ陳腐極まりない歌詞であっても、それを本人としてはとても大事に歌おうとしている。そんな気がして。
 そうか。やっぱり聴き方としては最早、大物演歌歌手のレコードを聴くのと同じになっているのよね、きっと(苦笑)。内容なんてどうでもいい、この声(コブシ?)が聴ければ、みたいなね・・・(トホホ)。
 まあ、そんな感じの、50枚目のオリジナル・アルバム、です。
 既発のアニバーサリーシングル「永遠〜」「惑星〜」以外の8曲を聖子さんが作詞・作曲。アレンジは上記2曲を除き、野崎洋一氏(6曲)と松本良喜氏(2曲)。
 では一応(苦笑)、曲紹介を。

  • Shining Star

 オープニングはバラード。“この世に生を受けたときから輝いている、心の中の一番星。”詞のコンセプトとしてはGoodなのだけどね。そのままタイトルにしちゃうからつまらないのよね。残念でならない。聖子さん本人のバックコーラス(ハミング)の美しさが光る曲。

  • It’s a wonderful life


 弾むメロディーのポップス。このアルバム、野崎さんの編曲には色々努力のあとが見られるだけど、前作『ビビデ』とあまりにイメージがカブリ過ぎていて、ちょっとイタダケない。品は良くても、メルヘンチックなのが鼻についてしまうのよね。この曲も、そう。聖子さんの詞は、「花びら舞い飛び〜」でまたか!と思ったら続くフレーズは「五線紙に並んでゆく」。おっと、ちょっぴり工夫した努力のあとが。でもタイトルは相変わらずね。

  • Summer Time Magic

 ご存知サングラスのCMソング。ド派手なブラス・アレンジ(でもちょっとダサい)。まあたしかにキャッチーだしメロディーも悪くないし、このアルバムの“キラー・チューン”? 聖子さんのボーカルも最近では珍しくアップテンポの曲を爽やかに歌えていて、Good。

  • あなたへの想い

 “あなた”タイトルシリーズにまた1曲、加わりました・・・。会えなくなった今でも、ずっと変わらずあなたを思っています、みたいな。そう言えば聖子さん、由紀さおりさんの「生きがい」が好き、と言ってましたっけ。確かにそれに近い世界観ですけどね、全然そこには届かなかったようで。

  • Take a chance!!

 イントロはおもちゃのピアノの音。弾むリズムでスキップしながら歌う聖子さん、みたいなイメージ。(ここも『ビビデ』が被る。野崎さんの限界が見え隠れ。)サビの「♪Take a chance」の聖子さんの発声、「テ」の音ばかりが強すぎて、何だか落ち着かないのよね、この曲。それにしても「Take a chance」に続いて「Take a risk」というフレーズをいとも簡単に使えちゃう聖子さん、ナニゲにスゴイかも。

  • ずっと愛してるから

 ピアノをバックにしっとりと歌いあげるバラード。いたって普通の曲なのに、なぜかこの曲の聖子ボーカルにググっときた私。例えば「♪聞いて欲しいことだって もっとあったの」というフレーズを「聞いて欲しい、ことだ〜あ〜って〜」とスラーをかけて歌う部分とか。「♪優しさを振り切って離れたこと ごめんね」という部分、伸ばした音にかかる繊細なビブラートとか。タイトルは「ずっと愛してるから」ではなく、歌詞の中にある「ずっと後悔してるの」の方がインパクトあったかも。

  • Melody♪


 記号付きのタイトル、もういい加減、やめません?聖子さん。セルフ聖子にありがちなメロディーの、平凡なポップス。スキップ!

  • Guardian Angel

 ワルツのバラード。得意なファルセットとイングリッシュを多用して聖子さんが気持ちよさげに歌っています。今の聖子さんが勝負すべきなのは、メルヘンチックなお花畑ポップスではなくて、やはりこっちでしょう。英語でバラードを歌うと、いきなり荘厳なイメージを纏う聖子さん。変拍子風になるサビのアイデアも秀逸。そこで、タイトルをもうひとひねり。歌詞に使われている「風の音〜Angel's Voice」。これで決まりね。使いまわしタイトルは、もうやめましょうよ、聖子さん。

 わ!ここまでの流れとはやっぱり全然違う!異次元!素晴らしすぎて。

  • 永遠のもっと果てまで(詞:松本、曲:呉田、編:松任谷正隆

 感謝を込めて収録しました・・・てか?自作と同列にして収録するとは、大胆な聖子さんですわ。
 
 う〜ん。玉石混交。果たして既発の2曲を入れたフルアルバムとして10曲収録する必要性はあったのか・・・。私としては1・3・6・8曲目あたりと外国曲のカバーを組み合わせたミニ・アルバムで充分だったような気もする。
 マヤミキとの対談で、「自然体」を強調していた聖子たん。それを否定するつもりは毛頭ないけれど、こと作品作りに関してだけは、もっと練りに練って、とことん考えてもらって、「自然体」を捨てて欲しいわ。そう願っているワタシ。