セイコ・アルバム探訪2017〜『Daisy』

Daisy(通常盤)

Daisy(通常盤)

 さあ、稼ぎ時、到来よ!今年の夏もコンサートツアーやるわよ。あ、ついでにとりあえず新しいアルバムも急いで作ったので買っておいてね!コンサートでも何曲か、歌うわよ。
 みたいな、ね。(やれやれ。)
 聖子たんはご自分の趣味と実益を兼ねて、そして健康維持のために(笑)、とにかく毎年、同じスケジュールをこなすことに命をかけているみたいです。『SEIKO JAZZ』というしっかりとコンセプトを持ったアルバムを春に出したばっかりなのに・・・。あちらはあくまで「お仕事」で、これはこれ。私のやりたいことは、こっちよ!みんなもわかってるでしょ?とでも言わんばかりに。
 そんな感じで届いたこのニュー・アルバム、果たして一生懸命レビューする意味はあるのかしら・・・なんてことを思いつつ。まあ、こっちもお約束で、とりあえずは「探訪」してみるといたしましょう(苦笑)。
 だって、聖子さんが新しいアルバムを出したという、それ以外の意味は、何も無いんだものね。これって。
 聖子たん。いよいよナツメロ歌手の域に入ってきた感じよね。ナツメロ歌手と言えば、恒例のリサイタルは、第一部が人情味溢れる歌謡ショー、第二部に懐かしのヒットメドレーで、決まり。一方、聖子たんの夏コンの場合、第一部は、後にも先にもこの一回だけしか披露されない新譜からの「口パク」パフォーマンス(もちろん、セットはメルヘンチックな白いお城に、衣装はお姫様ドレス)。第二部の恒例のリクエストコーナーとアコースティックコーナーを挟んで、第三部はいつものノリノリ80年代ヒットメドレー。ファンのみんなが知っているあの曲、この曲を歌うわよ!みんなも、歌ってね〜〜!みないな世界ね。それはそれで、いいのよ。恒例行事、つまりは「お祭り」だから。
 そしてファンの方はと言うと「奥さん、リサイタル、一緒に行きましょうよ!そうそう、今年出した新曲も披露するみたいよ。CD買って、練習しとかなきゃ!ウフフ・・」となるわけね。トホホ。
 その新譜。コアな聖子ファンは、あまりの“王道セルフ”ぶりに、もはや諦めの境地。感想は→「予想していたよりも、悪くなかったです」。
 もっとディープなファンは、怒り心頭。感想は→「完全にやっつけ仕事。夏のコンサートのためのグッズの一つでしかない(怒)」。
 案外、聖子ファンじゃない人の方が、フツーのポップ・アルバムとして、楽しめてしまったりするのかも。。
 とは言ってもね、ガンコに続けるホワイトバックのアルバムジャケに(本人はシリーズ化のつもりかもしれないけど、見てよこれ!→)、Daisy(初回限定盤B)Shining Star(初回限定盤A)(DVD付)永遠のもっと果てまで/惑星になりたい(初回限定盤A)(DVD付)薔薇のように咲いて 桜のように散って(初回盤A)(DVD付)
安易で使い回しワードフル回転、おまけに日本語としておかしなところもあちこち目に付く稚拙な歌詞は、趣味の世界でならまだ許容できるけれども、やはりプロの作品としては、作品へのこだわりだとか愛情だとかアーティストとして当然の「完成度を求めていく姿勢」が、近年のセイコさんのセルフ作品には、圧倒的に足りない気がするのよね。例えばオープニング曲「春の風誘われて」というタイトル、曲を聴けば確かにサビのフレーズそのままなので受け入れられるものの、本来はたとえフレーズがそうであっても、いざタイトル決めする時には「春風に誘われて」とか、正しい日本語に直すのが正解のように思うのよね。逆にその方が変化があって面白いし(って、俺の頭が固いだけ?)。あと「Daisyを君に」。これって、「花束を君にFantômeでしょ?どう考えても。聖子さんが意図的・無意識にかかわらずヒット曲のパクリをしちゃうのは手クセのようなもので避け難いにしても(苦笑)、だれか回りに「これは恥ずかしいから止めませんか?」と忠言できる人はいなかったのかしら?この曲が中々イイ曲なだけに、そういったツメの甘さがなんとも歯がゆくて。
 まあ、そんなわけで、思わずグチがドバーっと出ちゃいましたけれど(苦笑)実は、それほど嫌いなアルバムじゃないんです、これ。(思わず“エロジジイが撮ったスナップ写真?”と思わせるようなジャケットと、思わず“聖子たん、もしかして●知症が始まっちゃてる?”と言いたくなるような破壊力バツグンな収録曲のタイトルを除けば!ね。)
 思いのほか前フリが長くなってしまいましたので、今回の曲紹介はサラッといかせて頂きます。YOSHIKIによる10曲目「薔薇のように〜」を除き作詞・作曲は聖子さん。今回はアレンジの野崎洋一さん(3,4,10以外)と松本良喜さん(3,4曲目)がそれなりに頑張って、変化をつけているのが印象的。

  • 春の風誘われて〜Spring has come again〜

 タイトルそのまんまのサビのフレーズがポップで、印象的なアップテンポのポップス。声は枯れているけど、やっぱりこの声、明るい曲に乗ると心地よいのは確か。

  • 友達で恋人がIt's a wonderful♡〜Shake it!! Baby〜

 ヘンテコなタイトルなうえ(また♡つけちゃったのね。トホホ。)歌詞も聴けば聴くほど意味不明。迷宮入りです。しかし意表を付くワルツのメロディーが耳を惹く。なんだかこれこそが聖子ワールドなのかも、と思わせてしまう、いろんな意味でスゴイ曲。

  • 今を愛したい

 CMソングのこの曲はビックリするほどオーソドックスなバラード。というか、イントロから、既視感たっぷり。でもコアなファンには、こんな曲が安心なのかしら?

  • あなたへの愛

 ピアノのイントロ、聴いたことあるような気がする。あれ?前の曲の中に“あなたへの愛”ってフレーズ、出てこなかったっけ?でもコアなファンには、やっぱり、こんな曲が安心なのかしら?

  • 私・・恋してる

 タテノリ&アップテンポの親しみやすいポップ・チューン。聖子たんのダビングボーカルと、ヴァース部分でバックがドラムだけになるところが新鮮。

  • 私の明日へ

 今までになく静謐な雰囲気のイントロと歌い出しに思わずハッとする(歌い出しの聖子さんのボーカルの音が割れてるんですけど・・・)。でも曲が進むにつれて、どこか散漫な印象に。うーん、一本調子に進んできたところでこうした荘厳な雰囲気の曲を持ってくるという意図はすごくわかるんだけどな〜、ちょっとツメが甘い気がする。残念な曲。

  • ごめんねなんて言わないで


 ミディアム。低音で膨らませた声の歌い出しから高音のファルセットに展開する曲構成は中々で、セイコ・ボーカルを純粋に楽しめる曲。

  • あなたpropose tonight☆

 またまたヘンテコなタイトル(こっちには☆がついちゃいました・・・)。でもイントロのハミングからして軽やかでハッピーなポップスで、これ悪くないです。ドラミングだけの短い間奏もいいアイデア。このアルバム、ヘンテコなタイトルの曲に意外な良曲が多いという珍しいパターンです。

 ここは、アルバムタイトルと同じ「Daisy」で良かった気がする。ギター一本をバックに切々と歌う聖子さんのこの歌声に、ファンは満足でしょう。

  • 薔薇のように咲いて 桜のように散って

 やっぱり格が違いますね。ああ、あのサプライズもぬか喜びだったのね・・・(タメ息)。
 
 今回も最後までお付き合い、ありがとうございました。